アットランダム通信

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS 井上ひさし氏追悼文 「大野晋さんを悼む」

<<   作成日時 : 2008/07/28 07:16   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 4

新聞にタイトルのような追悼文が掲載されました。井上ひさし氏は言葉と格闘してきた作家で、言葉に関して信用のおける作家です。共感する点が多かったので、以下に引用します。

 私たち日本人の日常の言語運用の面で、これほど大きな役割を果たされた方は日本史上、初めてでしょう。日本人の言葉をじつに深いところで支えてくださった巨人の一人でした。大野さんの業績については、三つの素晴らしさがすぐに思い浮かびます。
 私が大学を卒業し、社会に出ようかというころ、『広辞苑』が刊行されました。辞典と事典を統合した辞書であり、「走る」とか「食べる」とか、普通の大和言葉の解説が素晴らしかった。
 私の場合で言えば『広辞苑』を一枚一枚めくり、形容詞や動詞、名詞など日本語の基礎を学びました。そこで言葉が生まれ出たときの感覚や、それまでに見たことも聞いたこともない素晴らしい語釈に出合いました。表現が本当に親切で、深かった。それらを大野さんが書かれていたと、あとで知りました。
 共同編集された『岩波古語辞典』は今も毎日、五、六回は引きます。角川書店刊の『角川必携国語辞典』も、「うとうと」と「うつらうつら」の違いなど日本語の機微を教えてくれます。とにかく、大野さんは私たち日本人の言語運用の支えでした。

とくに強調したいのは、「文筆家としての大野晋」です。実に優れた文章の書き手でした。私が心を打たれたのは、大野さんが「日本人が無茶な戦争ににのめり込んで行ったのは、日本語の使い方に原因があったのではないか」と問うた点です。この問題に関する文章は淡々としていながらきちっと引き締まり、それでいて情感がこもっています。
 戦争の原因を探り、軍隊に目を向けたのが司馬遼太郎さん。弱い市民社会や不条理にメスを入れようとしたのは丸谷才一さん。日本語の使い方に着目したのが大野さんでした。お三方とも戦時中に「戦後まだ生きていたら、この問題に取り組みたい」と思われた。「もし生きながらえたら」というところが共通しています。当時の青年たちの心中を察すると、涙がこぼれてきます。

 もう一つが日本語は南インドのタミル語から来たという見方を説かれたことです。斬新で、保守的な国語学の論壇に刺激を与えました。私はタミル語説を信じていますし、この説の大ファンです。私たちの日本語は、もとからの土着の言葉、南洋から来た音韻などいろいろな要素でできていますが、稲作のシステムと一緒にタミル語は日本語の核心をつくったのでしょう。

小生のような「生活人」でも「岩波古語辞典」は今でもお世話になっています。使い古して、背表紙をガムテープで補強して使っています。ずいぶん昔のことですが、「レプチャ語論争」というのがありました。医学博士安田徳太郎氏は、『万葉集の謎』を著し、ヒマラヤのレプチャ語のと日本語の同系を説いて、論争を喚起しました。安田説に最も厳しかったのが大野博士であったと記憶しています。その批判の姿勢は言語学の立場からする厳正かつていねいなものだったと記憶しています。小生が感銘しましたのは、『日本語をさかのぼる』(岩波新書)の「語根」という考え方でした。「タミル語」については、門外漢の小生は、井上氏ほどファンにはなれません。

大野博士の「係り結びの研究」は素晴らしい業績のようですが、これについては、別の機会で。

大夕焼焼きたい思い燻ってる

設定テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
おはよう御座います。本日の{井上ひさし氏追悼文}の貴方様の
必読書 ⇒角川必携国語辞典・・又・・岩波古語辞典・・等存在すら知りえませんでした、言葉に迷った時の道導として・・有難う御座います。
今メールの日本語に出会った時エッと思う事が有ります身近からより良き理解を
深めるためにも。感謝申し上げます。 みみ
射手座
2008/07/28 10:09
みみ様、コメント恐れ入ります。小生の乏しい体験からですが、ことばと真剣に格闘している方のご意見は説得力があるように思います。
アットランダム通信
2008/07/28 17:16
アットさん、こんばんは!

>井上ひさし氏は言葉と格闘してきた作家で、言葉に関して信用のおける作家です。共感する点が多かったので

私には難しいことは分かりませんが、井上ひさし氏の文章はいいですね。最近、「井上ひさしの作文教室」という本を読みましたが、文章の上手さについ引き込まれてしまいました。でも私の作文は上手くなりそうにありませんが。。。(〜〜)v

美代子
2008/07/29 19:45
美代子さん、コメント恐れ入ります。言葉と格闘した人たち、坪内逍遥(シェクスピア翻訳)、二葉亭四迷(ロシア文学翻訳 二葉亭の翻訳は今読んでもみずみずしいです。)、福田恒存(シェクスピア翻訳)、など。福田氏は「保守派」といわれましたが、そういうこととは関係なく、「国語問題」「進歩的文化人論」「平和論」などに関して、戦後、一番まっとうなことをのべていたように記憶しています。
アットランダム通信
2008/07/29 20:09

コメントする help

ニックネーム
本 文