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help リーダーに追加 RSS 本の寄り道 8 「悔恨共同体」

<<   作成日時 : 2008/07/04 07:26   >>

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奥武則氏著『論壇の戦後史』の中に、次のような記述があります。

○ 講演に行った北海道小樽市で「財団法人二十世紀研究所所長」という名刺を見た人が、「ああ、梨の研究ですか」と勝手に納得していたというウソみたいなエピソードを清水が記している。つい昨日まで皇紀○○年などと言っていた時代に、「二十世紀」を冠した名称はまことに斬新だったのだろう。……
 ……その中に、一九四七年現在の研究所員の名簿がある。今となってみれば、実にそうそうたるメンバーが並んでいる。 
  清水、大河内、細入の三人の創立メンバーに加えて、すでに名前をあげた丸山真男、林健太郎のほか、文学畑では、福田恆存、中野好夫、高橋義孝。社会科学者は、人文地理学の飯塚浩二、社会思想史の高島善哉、民法・法社会学の川島武宜ら。このほか、哲学者の久野収、真下信一、心理学者の宮城音弥、物理学者の渡辺慧もいる。総計十八人。

○ 二十世紀研究所がスタートした一九四六年二月における主要人物の満年齢をみてみよう。所長・清水幾太郎は三十八歳。大河内一男四十一歳、中野好夫四十三歳は少し年長だが、丸山真男は三十一歳、林健太郎は三十三歳。福田恆存も同じ三十三歳である。……清水の回想をもう一つ引く。

   あの頃、誰だったでしょうか、私のことをハーゲンベックと呼んだ人があります。ハーゲンベックというのは、
  有名な猛獣サーカス団の団長です。しかし、私はみんなを猛獣とも思わなかったし、また自分が猛獣を使い
  こなしているとも思いませんでした。むしろ、敗戦後の状況が、年齢や立場の違う私たちの間に新しい自然な
  友情を生み出していたと見るべきでしょう。

 ○ 戦後間もない時期に知識人を覆っていた精神状況を「悔恨共同体」と呼んだのは、丸山真男だった(「近代日本の知識人」『丸山真男集』第一○巻)。
     ↓
  戦争に反対して辛い目にあった少数の知識人でさえも、自分たちのやったことはせいぜい消極的な抵抗で
  はないか。沈黙と隠遁それ自身が非協力という猜疑の目でみられる時代ではあったとはいいながら、我々の
  国にはほとんどいうに足るレジスタンスの動きが無かったことを、知識人の社会的責任の問題として反省せね
  ばならない。もしそれが日本における権力や、画一的な「世論」にたいする抵抗の伝統の不足に由来している
  ならば、われわれは日本の「驚くべき近代化の成功」のメダルの裏を吟味することから、新しい日本の出発の
  基礎作業をはじめようではないか。日本の直面する課題は旧体制の社会変革だけでなく、われわれ自身の
  「精神革命」の問題である――そうした考えから「これまで通りではいけない」という気持ちは、非協力知識人
  の多くをもとらえていた、と思います。
  ……知識人の再出発――知識人は専門の殻を越えて一つの連帯と責任の意識を持つべきではないか、そう
  いう感情の拡がり、これを私はかりに「悔恨共同体」と呼ぶわけです。

○ 清水が語っているように、二十世紀研究所に集った人々は当時にあっても立場がちがった。だが、それはまさしく「専門の殻を越えて一つの連帯と責任の意識を持つべきではないか」と考えた知識人たちの集団だったといえるだろう。二十世紀研究所は「悔恨共同体」の一つの具体的なかたちだったのである。

○ 清水は「当時は、文化活動にしろ、最良の聴衆および読者を得ることが出来た時代と言えるでしょう。みんな例外なく真面目に聞いたり読んだりした時代です」と語り、
   ↓
 アット注→ここまで読んできますと、要するにどこかに指導者面をちらつかせている優秀な先生たちと「いい子」タイプの生徒たちの間に展開した啓蒙活動が二十世紀研究所の活動であったようです。著者の奥氏も「啓蒙活動」と言っています。つまり啓蒙活動で終ってしまったわけです。
 こうした活動が展開している頃、小生は中学生でしたので、この活動が分かるわけではないのですが、自分の親を含め、見渡すかぎり焼け跡が広がっている現実を背負って、生きるために悪戦苦闘している大人たちの背中をみて育ってきた小生には、清水さんがいうような「最良の聴衆および読者」の方が少なかったような気がします。

 そして、そういう最良でない人々の意識の底に届くような活動を二十世紀研究所はすべきだったと、今では思われます。そのためには、研究所の先生方はご自分たちの活動が、間違っても、「啓蒙」にならい道を模索すべきであったと思います。この時点からそれが開始されていれば、後の学校紛争も違ったものになっていたでしょう。

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コメント(2件)

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アットさん、こんばんは。
お変わりありませんか? 私は早くも夏ばてです。今夜も蒸しますね。

下校コールひびきわたりて賢治集  アット

アットさんのお宅にも下校コールが響き渡るのですか。あと二週間ほどで夏休みですね。今度は家の中が賑やかに?・・・
美代子
2008/07/04 23:20
コメント多謝。天候の変動に身体がついていけません。
統廃合によって、大きな小・幼・保が、近くにできました。沢山の児童が街に溢れ、老人を元気づけてくれています。
アットランダム通信
2008/07/05 07:40

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